AIによるデジタル革命は、金融機関にも多くの恩恵をもたらす

商業銀行や投資銀行、保険会社といった金融機関では、新規制への対応など多くの課題を抱える中、競争力を維持しつつ、さらなる業績拡大を図っていく必要がある。そのような環境において、それぞれの金融機関が、顧客サービス環境の向上や詐欺の防止、顧客ニーズの予測、コンプライアンス遵守、機密情報の保護など、様々な側面で、AI(人工知能)を活用したデジタル革命の恩恵を受けている模様だ。 たとえば多くの金融機関では、保有ポートフォリオにおいて起こり得る膨大な数の市場シナリオを、AIを使うことで想定している。そのためには高機能なアルゴリズムが求められるが、事前に設定したベンチマークが通常とは異なる動きをみせた場合、何らかのリスクが生じていると認識し、状況を分析できるよう、システムを構築しているという。また、保険会社においては、合法的に申請された保険金請求の行動パターンと、新たに申請された保険金請求を、AIを使って比較し、詐欺と疑わしい取引を検知するところも出てきているそうだ。 世界中の金融機関において、リスク管理及びサイバーセキュリティ強化、高頻度取引(high-frequency trading)などのために、AIを活用したデジタル革命が起きている。多くの金融機関は、AIを活用することによって、業績拡大などより良い結果を得ている状況だ。

資産管理分野のコンプライアンス対応、AIでコスト削減も

金融危機以来、資産管理分野に関する規制は強まるばかりだ。KYC、アンチマネーロンダリング、またデューデリジェンスといった一連のコンプライアンス対応において、資産運用会社に対する当局からの要求は年々厳しくなっている。一方、これらの業務をAIを活用した自然言語処理(NLP)で行うことにより、大幅なコスト削減につながるという期待も高まっている。 米ITスタートアップ支援企業であるPlug and Playは、銀行や資産管理会社が、コンプライアンス対応の一環として大量の法律専門家を雇ったことで、逆にヒューマンエラーによるコストを高めてしまったと報じている。だが、AIによる自然言語処理がさらに発達すれば、従来は人間の手で行わざるを得なかった多くのタスクが自動化され、コンプライアンス対応にかかる負荷が劇的に減少すると予測される。 コンプライアンス対応にかかるコストの大きさを考えれば、資産運用会社のAIによる自然言語処理の導入ニーズは明らかである。将来的には、多くの法律専門家がAIで代用される可能性がある。英ロイター通信によると、このようなガバナンス、リスク、およびコンプライアンスにかかる規制対応コストは、資産運用会社の運転資金における15~20パーセントを占めると伝えられている。

金融業界にとってAIの活用が差別化要因に

近年、AI(Artificial Intelligence, 人工知能)が金融機関の管理業務の位置づけを激変させ、金融サービスに新たな変革をもたらしている。一方で、AIの活用が進むにつれて、グーグルやアマゾンといったビッグテック(big tech)を含む一部のプレーヤーにより、金融ネットワークの構築や情報・データの集約が進んでいることから、セキュリティリスクが高まっていることも確かなようだ。 世界経済フォーラムとデロイトが共同で発行した「金融サービスの新展開~いかにしてAIが金融エコシステムを変革したか(The New Physics of Financial Services-How artificial intelligence is transforming the financial ecosystem)」には、AIを用いて競合他社との差別化を図る金融サービス提供の事例が掲載されている。例えば中国平安保険では、保険信用審査から保険金支払いまでを迅速に行うプラットフォーム「One Connect」を提供し、売上高拡大に大きく貢献しているという。金融機関の顧客もまた、AIを活用した自動・自立型の金融サービスを利用できるようになり、利便性が飛躍的に向上している模様である。